労務トラブルを未然に防ぐには普段から事業主として問題意識を持ち、事前に然るべき内部ルールを定めることが最も効果的です。
そのような内部ルールが未整備な場合には、早急に専門家に相談し体制を整えることが必要です。
もし問題が既に発生してしまった場合には、問題の所在を的確に見極め、然るべき処置をした上で、一刻も早く前向きなテーマに取り組むことが、会社にとっても社員にとってもベストな対応です。
そして従業員に労働訴訟を起こされてしまった場合には、スピーディかつ適切な対応が求められます。
(1)労働訴訟を起こされたら
裁判所から和解の提案があった際の対応としては、双方の主張・立証を吟味し勝訴できるという十分な見込みがあるなら判決を求めるのもよいと思われます。
それ以外の場合は和解に応じるよう慎重な判断を求められることになります。
裁判手続はその進行について法律で厳密に定められており、弁護士以外の方が独力で手続を進めることは容易ではありません。
とりわけ訴訟手続に関する知識の不備のために、本来勝てるはずの訴訟に敗訴してしまうとなりますと、御社の被る損害は計り知れないものとなりますので、労働訴訟を起こされた場合には、当初から弁護士に委任し手続を進行することをお勧めします。
(2)労働訴訟の争点
労働訴訟の典型的な形には従業員地位確認請求事件があります。
従業員地位確認請求とは、従業員が解雇された場合、その解雇手続が無効であり、現在も従業員の地位が存在することの確認を求めるとともに、未払給与の支払い等も求める訴訟のことです。
従業員地位確認請求事件においては、解雇の態様によって下記のようなポイントが争点になります。
懲戒解雇の場合
懲戒解雇の場合、通常退職金は支給されず、また労働基準法で定められる30日前の解雇予告手続も求められません。更に解雇予告手当の支給も求められることなく、即時に解雇の手続をとることが可能となります。
懲戒処分が有効となるためには、
1.就業規則の内容が従業員に周知されていることを前提に、就業規則に懲戒処分の規定が存在していること
2.懲戒事由の規定内容が社会通念に照らし合理的であることを前提に、当該従業員に懲戒事由が存在すること
3.その他解雇に際して要求される一般的な要件(不遡及の原則・一事不再理の原則・平等取り扱いの原則・相当性の原則・労働基準法上の解雇制限に該当しないこと等)を充たすこと
が必要です。
労働訴訟の場においては懲戒解雇の手続に際し、これら要件が充たされていたかについて争われます。
整理解雇の場合
整理解雇とは解雇手続の中の「普通解雇」に属するもので、労働基準法上明確な定義がある用語ではなく、判例が集積される中で浮上してきた労働慣例上の用語です。
様々な要因により事業を継続することが困難な場合に、やむを得ず行う人員整理としての使用者からの労働契約の解除のことを指します。
この整理解雇も業績が苦しいからと言って無制限に行えるものではなく、
1.人員削減の企業運営上の必要性
2.解雇回避努力義務を会社が履行していることを前提に、整理解雇を選択することの必要性
3.人選基準そのものが合理性を有することを前提に、被解雇者選択の妥当性
4.従業員への十分な説明・協議等納得を得るための手続が履行されていること
等の手続が妥当に行われていることといった各要件が充たされている必要があります。
労働訴訟の場においては整理解雇の手続に際し、これら要件が充たされていたかについて争われます。
万が一労働訴訟を提起されてしまった場合の対応につきましては弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
労務問題における弁護士の役割
上記の問題を解決するためには専門家の判断を得ることお勧めします。
労務問題は非常に繊細な問題であり、「法」という枠以外に個人の見解(組織の見解)の範囲という部分が存在します。
やはりそのような部分での判断は専門家でありかつ多くの経験をした人間の判断が有効的です。
以下の労働サイトもご覧ください。