<事案>
X社は、ある取引先(「甲社」と呼ぶことにします。)と継続的に商品売買をしており、売掛金が約100万円ほど残っていました。
ところが、ある日を境に甲社は支払いをしてこなくなりました。
その理由として、X社が直接取引していたのは、甲社から委託を受けていた会社(これを「乙社」と呼ぶことにします。)であって、甲社の商号を乙社に使用させていたにすぎない。したがって、甲社がこの売掛金を支払うべきものではないということでした(支払うのは乙社である。なお、乙社は破産手続の真っ最中でした。)。
X社は複雑な法律関係となっていることもあって、売掛金の回収に困ってしまい当事務所に相談に来られました。
「甲社の主張」:「X社←→乙社←→甲社」
となっているので、A社と甲社は直接の契約関係にない
<解決に至るまで>
X社の売掛金を支払って貰うために、まず弁護士が相手方に内容証明郵便を送付し、至急支払うように請求しました。
その内容は、仮に乙社が甲社から委託を受けていた会社であるとしても、甲社は乙社に自社の商号を用いて取引をさせている。そうすると甲社は、名板(ないた)貸人に該当し、やはり支払う責任を負う(商法第14項)、というものです。
こうした主張と交渉を繰り返す中で、甲社は100万円全額を支払う義務を認め、合意書を締結しました。
<解決のポイント>
乙社は倒産(破産)しており、そのままではほとんど回収できない恐れがありました。
甲社の主張に対して、商法第14条の名板職人の責任という法的構成を判例等を用いて主張を迅速にできたことがよかったのではないかと思います。