<事案>
M社は、飲食業を営んでおり、盛りが多いことが有名で、お客様から高い評価を受けています。
M社は、従業員を住み込みで雇っており、M社の代表からすれば、従業員とはいえ、家族のように扱っていたようでした。そのお気持ちからか、雇用契約書を交わしておらず、正確な労働時間も把握しておりませんでした。また、賄いや寮費としてかなりの金額を給料から控除されており、経営者には基本給という考えが希薄で、手取り給与額について従業員と合意していると認識されておられました。しかし、元従業員3名から未払賃金と未払残業代として、約2000万円を請求されました。経営者の方は、驚いてすぐに当事務所に相談に来られました。
<解決のポイント>
まず、相談に来られたM社の経営者に、労働基準法にある労働者の権利を説明し、元従業員が請求できる部分について納得してもらいました。その上で、請求額の根拠を確認し、できるだけ減額できるように進めていくことに合意しました。弁護士は相手方の訴状を確認し、以下の点について主張しました。
・訴状中の労働時間より、実際の労働時間は少なかったこと。
・賄いや寮費等の控除の合意があったこと。
最終的に、
・未払賃金はなし(控除合意はあり)
・未払残業代は、労働時間について両者の中間の時間による金額についてを基準が定まり、約3分の1である600万円で和解すること
ができました。
本件のように、経営者のあずかり知らぬところで、従業員が不満をつのらせ、退職後に未払賃金や残業代を請求する事件があります。経営者としては、信頼して仕事を任せていた元従業員から裏切られたような気持になられるでしょうが、やはり法律に則った労働条件にしておかなければ防ぐことができません。
しかし、請求されたからといって、すぐに支払ってしまうのは危険であると考えます。請求金額・その根拠がどこにあるのか、きちんと確認しましょう。その際、専門家に相談されることをお勧めします。
また、このような事件を防ぐという意味でも、雇用契約書や労働条件が適法なのか、あらかじめ確認しておかれることもお勧めです。お気軽にご相談ください。