1.事案の説明
A社はB社に対して3年ほど前から食材の販売をしていたがR1,10月からB社の製造した総菜を購入しこれをAからCへCからDへと販売するサプライチェーンの一端を担うようになった。
ところがR2,2月B社は民事再手続き開始申立てをなした。R2,3月1日B社の再生手続き開始決定がなされた。
A社は上記再生決定申し立てから開始決定までの買掛金を食材を販売した売掛金と相殺しようとしたがB社代理人から否定されたために弊社に相談に来られた。
2.相談に至るまでの経緯
B社代理人はAがR2,1月に再生手続き開始決定申し立てに先立って行われた債権者説明会に出席ていたことからAの総菜購入代金債務の負担が「支払い停止後支払い停止を知って再生債務者に対して債務を負担した場合」に該当するとして相殺禁止に該当すると主張した(民事再生法93条1項3号本文)
3.結果
これに対してA社の代理人に就任した弊所で検討した結果、確かに形式的には上記の相殺禁止に該当するが、A~Dまでの商流はそれぞれ欠かせない役割をもってサプライチェーンとして組み込まれており、これが相殺禁止の例外「支払い停止の事実を知る前に生じた原因によって債務を負担した場合」に該当する。すなわち、一時点の売買だけを見ると相殺禁止に該当しそうであるが一連の取引を継続して加味すると債権者平等の潜脱として債務負担した場合とは異なるので相殺禁止の例外に該当すると主張した。
4.解決ポイント
結果的に、A~Dの取引全体を観察して各社商流に欠かせない役割を果たしており、今後の取引も継続すること、一時点の取引だけ抽出して判断することは取引の実情にあわないことから債権者平等に反するとは言えず相殺禁止の例外として相殺が認められた。
結果的にA社はB社から相殺により全額回収が可能となりB社の民事再生による債権の焦げ付きを回避することができた。