債権・売掛金・未収金の回収
会社を経営していれば、必ず、取引先の入金の遅れや、売掛金未回収といった事態に出くわします。
電話や直接面談して催促しても、支払われない場合、途方にくれるか、或いは逆に強硬な手段に出ようという思いに駆られることもあろうかと思います。
しかし、一歩間違えると、脅迫や恐喝などと言われ、逆に相手方から損害賠償請求を受けることもあります。
ここでは、合法的かつ、効果的に売掛金・債権・未収金を回収する方法をお伝えします。
債権回収を実施するための7つの方法
債権回収を行ううえでは、大きく分けて7つの方法があります。相手方(取引先)の対応によって、実施すべき対応方法も異なりますので、状況を考慮しながら検討していくことが重要です。
1.弁護士が、貴社の取引先に電話・面談して催促する
債権や売掛金が回収できない場合、多くの会社では、弁護士に相談する以前に、自社で電話や面談による催促を行っておられるものと思われます。
しかし、弁護士が電話や面談で交渉することで、取引先の反応が変わることがあります。
つまり、弁護士が電話することで、取引先にこちらの本気度が伝わり、「支払わざるを得ないな」と思われる可能性が高くなります。
2.弁護士が、(弁護士名で)内容証明郵便で催促・督促する
弁護士に依頼しなくても、自ら、売掛金等を請求する内容の内容証明郵便を作成してこれを相手方に送付することもできます。
しかし、会社が会社名で内容証明郵便を送付した場合、相手方に対する強制力はさほど強くありません。
これに対して、弁護士が弁護士名で内容証明郵便を送付した場合、取引先は「このまま支払わないでいると裁判を起こされるかもしれない」と考え、支払いに応じる可能性が高くなります。
実際、内容証明郵便には、「期限内に支払わなければ法的措置を講じる」と明記しますので、相手方は、「支払わざるを得ないな」と思われる可能性が高くなるのです。
3.民事調停手続をする
調停は、裁判所を利用する手続ですが、弁護士を立てずに、自ら調停の申立を行うことも可能です。
しかし、調停はあくまで話し合いですから、相手方がそもそも裁判所に出頭しなければ成立しません。
また、狡猾な相手になると、不当な引き延ばしを行うこともあり、さほど実効性がない恐れがあります。
これに対して、弁護士に依頼して調停を申し立てた場合には、相手には、裁判所へ出頭しなければならないという気持ちや、このまま調停が成立しなければ次は訴訟になるという気持ちが、芽生えやすいと言えます。
4.支払督促手続
支払督促手続とは、「支払督促」という書類を裁判所から相手方に送付して貰い、相手方の反論がなければ、「支払督促」に記載された債権を公的に認めて貰うことができるという制度です。
しかし、相手方が異議を申し立てた場合には、「支払督促」は効力を失ってしまいます。
このようなことから、支払督促手続については、弁護士が代理して行うケースはごく稀です。
5.少額訴訟手続
少額訴訟手続とは、60万円以下の金銭の支払を請求する訴訟を提起する際に求めることができる特別な訴訟手続で、原則として審理を1回のみで終わらせて直ちに判決を行う手続です。
しかし、少額訴訟も、相手方が応じず、通常訴訟への移行を求めた場合には、通常訴訟へ移行されてしまいますので、時間を浪費するおそれがあります。
また、少額訴訟によってなされた判決に、相手方が異議の申し立てた場合、再び審理をやり直すことなり、大きく時間を浪費してしまいます。
このようなことから、弁護士は、あえて少額訴訟手続を選択せず、最初から通常の訴訟手続を選択するのが通常です。
6.訴訟手続(通常訴訟手続)
訴訟手続は、債権・売掛金を回収する方法としては一番の正攻法です。
訴訟手続については、時間がかかるというイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、実は第1回目の裁判期日終了後直ちに判決が出るケースが非常に多いのです。
また、相手方が裁判期日に出頭した場合でも、事実関係を争うことなく「一括では支払えないので、分割払いにして欲しい。」等と和解の申し入れをしてくるケースも非常に多く、直ちに判決とはいかないにしても、裁判上の和解交渉がまとまらないときはいつでも和解交渉を打ち切って、早期に判決を貰うことができます。
また、相手方の住所が判明しない場合でも、公示送達により、判決を貰うことが可能です。
(訴訟手続により判決を貰ったとしても、取引先が判決に従わず、代金を支払ってくれないことも考えられます。しかし、その場合でも、強制執行手続の前提として先に判決を取得しておくことには大きな意味があります。)
7.強制執行手続
確定判決、和解調書、調停調書などは「債務名義」と呼ばれ、相手方が任意の支払に応じない場合、裁判所に強制執行を求めることができます。強制執行には、大きく分けて、1)不動産執行、2)動産執行、3)債権執行の3種類がありますが、一般の企業において強制執行といえば、一番多いもの3)の債権執行です。
債権執行の中心は銀行預金の差押えといえます。
銀行預金を差押えれば、回収すべき金額の範囲内である限り、差押時の預金残高をそのまま回収することができます。
相手方が企業であれば、仮にその口座にほとんど預金がなかったとしても、営業に重大な支障が生じるため、任意に代金を支払わせることができる場合があります。
また、相手方が債権・売掛金を有している相手方の取引先が判明している場合には、相手方の有する当該債権・売掛金を差押えることもできます。相手方は、自らの取引先からの信用を失いたくないとの理由から、差押後に任意に支払ってくる可能性もあります。
このように、強制執行手続は債権回収における最後の手段として非常に有効です。
債権回収を弁護士にご依頼いただくメリット
上記のように対応方法が複数に分かれているなかで、弁護士にご相談をいただくことで適切な対応方法に関するアドバイス実施が可能です。実際にご相談いただいたなかで、弁護士への依頼によって満足いただけている点は下記のようなものが挙げられます。
交渉が有利になる
弁護士が代理人となって、債務者に内容証明郵便を送付するだけで、債務者が弁済に応じるケースも数多くあります。
弁護士が代理人につくことで、請求に応じない場合はより強力な法的手段が講じられてしまう、との心理的プレッシャーが債務者に働くためです。
取引先が倒産する場合、債権回収は時間との勝負になります。
交渉段階でできる限り早く回収しなければ、他の債権者に債務者の財産を持って行かれてしまうことも十分にあり得ますので、弁護士に委任して迅速に交渉を進めましょう。
最適な法的手段がとれる
債権回収のためには様々な方法が考えられます。全てのケースにおいて通用するベストの方法などなく、ケースごとに手段を模索することになります。
例えば、内容証明を相手方に送るだけでも、そのことが原因となって今後の取引が途絶えてしまうかもしれません。弁護士に相談したのならば、どの方法がもっとも適切なのかという判断が可能となり、最適な法的手段を採ることが可能になります。
訴訟提起・強制執行ができる
内容証明を送る、民事調停を申し立てる、支払督促を申し立てる、といった方法が奏功しない場合は、最終的には訴訟を提起することになります。
しかし、訴訟は高度の専門性が必要となります。当方に有利な証拠を収集し、整理した上で当方の主張を説得的に行うための書面を作成する、といったことは大変な手間がかかる作業であり、専門家に依頼した方が合理的・経済的です。また、訴訟で勝訴した後は、強制執行手続をしなければならず、これもまた煩雑です。弁護士に依頼することで、訴訟・強制執行を適切に遂行し、債権回収を図ることができます。
他士業に依頼することとの違い
内容証明郵便の作成等、債権回収を司法書士や行政書士に依頼する方法もありますが、司法書士や行政書士は、元々民事・商事のみならず刑事法まで含めたトータルな法的サポートを行うことを予定した資格ではないため、法的知識の正確性・豊富さの点で疑問がない訳ではありません。
また、内容証明郵便を送付した後の相手方との交渉については、簡易裁判所における代理権を有しない司法書士及び全ての行政書士は、弁護士法72条に抵触するため、原則として行うことができません。
このため、せっかく送った筈の内容証明郵便も、いわば「送りっぱなし」になってしまう恐れがあります。
債権回収に関するご相談は当事務所にご相談ください
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。当事務所では債権回収案件の解決に向けて、具体的に発生している債権の回収方法に関するご提案・対応はもちろん、再度債権を発生させないための対応策に関するご提案も実施しております。債権の発生は放置をすると、多額に膨れ上がってしまうケースも少なくありません。ぜひお早めに専門家へのご相談をご検討ください。